おちんちんアクセルファイトクラブ。

直播預告
おちんちんアクセルファイトクラブ。
何処かの誰かが始めたらしい。
そこでは名前も職業も性別も社会的地位も存在しない。
あるのは純粋な”バトル”だ。
相手を傷つけることが目的ではない。
相手を打ち負かすことが目的でもない。
ただひたすらに、『どちらが強いか』をシンプルに決める。

ふたりの戦士が交互に叫び、そのどちらが『強かったか』を観衆が決める。
はじめて目にした時は意味が分からなかった。

「これ、何をしてるんだ?」
「おちんちんアクセルバトルだよ」
「おちんちんアクセルバトル?」
「なんだ、新入りか。まぁ見てな」

薄暗い地下駐車場、観衆に囲まれたふたりの人影。

「おちんちんアクセルゥ!!!!!動けぇえええ!!!!」
「おちんちん……アク!!!!セル!!!!可動しろォーーー!!!」

突如始まったのは下ネタの叫び合い。
いい大人が大声でよくわからない下ネタを叫んでいる。
観衆は盛り上がる。
いい大人しかいない場所でいい大人が子供の用に目を輝かせて歓声を送っている。
わけがわからない。
わけがわからない──熱量を感じる。

「勝者は──どっち!!!?」

叫び合いが終わり、誰かの声がする。
先攻、後攻の順に手を挙げ、投票のようなものが行われた。

「勝者、先攻のアクセラレーター!!!!」

ひときわ大きな歓声が上がり、勝者と敗者は熱く握手し、観衆に戻っていった。

「さぁ次のバトルはどこのどいつだァ―!!」

まだこのバトル?が観れるのか、と思ったのもつかの間、背中を誰かに押されて前に出てしまった。

驚いて振り返ると先ほど声をかけた男がウインクしていた。

「おおーっと!!新人さんの登場だ!!!今宵生まれる新たなアクセラレーターを拍手で迎えよう!!!」

割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。
とても引けるような雰囲気じゃない。
足が震える。
汗が流れる。
だが、──どこか楽しくなっている自分もいる。

「──やってみようか」

ネクタイを緩ませる。
久しく感じなかった高揚に口元が緩む。

──ここはおちんちんアクセルファイトクラブ。
熱気と狂気の闘技場。

今夜21時、開催。

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